東京高等裁判所 平成11年(行ケ)175号 判決 2000年12月19日
原告
株式会社フクハラ
代表者代表取締役
【A】
訴訟代理人弁理士
【B】
【C】
第175号事件被告
ドムニクハンターリミテッド
代表者代表取締役
【D】
訴訟代理人弁理士
【E】
【F】
【G】
第176号事件被告
オリオン機械株式会社
代表者代表取締役
【H】
訴訟代理人弁護士
渡辺正造
弁理士
【I】
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
「特許庁が平成9年審判第16464号及び第19989号事件について平成11年4月7日にした審決を取り消す。」との判決。
第2事案の概要
1 特許庁における手続の経緯
原告は、名称を「空気圧縮装置及び油水分離装置」とする登録第2118598号考案(平成2年2月17日登録出願、平成4年8月11日に出願公告(実公平4-33430号)、平成8年5月20日に設定登録。本件考案)の実用新案権者である。
本件考案について被告らは無効審判請求をし(被告ドムニク ハンター リミテッドの請求は平成9年9月26日にあり、平成9年審判第16464号事件として、被告オリオン機械株式会社の請求は平成9年11月20日にあり、平成9年審判第19989号としてそれぞれ係属)、審理されたが、平成11年4月7日、「登録第2118598号実用新案の明細書の請求項第1項ないし第2項に記載された考案についての登録を無効とする。」との審決があり、その謄本は同年5月17日原告に送達された。
本件考案については、平成9年審判第19989号事件における答弁書提出期間内の平成10年4月20日付けで明細書について訂正の請求があり、これに対して訂正拒絶理由が通知され、平成10年10月26日付けでこの訂正請求について手続補正がなされ、これに対して平成10年12月7日付けで訂正拒絶理由の通知がされている。
2 本件考案の要旨
(1) 訂正請求に係る登録請求の範囲(訂正考案)
1. ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置。
(2) 訂正請求前の登録請求の範囲(本件考案)
1. ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結したことを特徴とする空気圧縮装置。
2. 油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水に分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有することを特徴とする請求項1記載の空気圧縮装置。
3 審決の理由の要点
(1) 平成9年審判第16464号の請求人(被告ドムニク ハンター リミテッド)の主張
本件登録第2118598号実用新案の請求項1、2に係る考案(本件考案)は、本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である審判甲第1、第2号証にそれぞれ記載された考案であるから、実用新案法3条1項3号に規定する考案に該当し、また、審判甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定に違反して実用新案登録を受けたものであるので、その登録は無効とされるべきものである旨主張し、次の審判甲第1~5号証を提出している。
① 審判甲第1号証…「OEWAMAT 20(Die konsequente Oel-Wasser-Trennung fuergrosse Luftverdichterstationen)」
② 審判甲第2号証…「OEWAMAT(Efficient oil/water separation fromoil-contaminated compressed air condensate)」
③ 審判甲第3号証…「GO GREEN-REDUCE POLLUTION」
④ 審判甲第4号証…独文宣誓書(訳文付)
⑤ 審判甲第5号証…英文宣誓書(訳文付)
(2) 平成9年審判第19989号の請求人(被告オリオン機械株式会社)の主張
本件登録第2118598号実用新案の請求項1、2に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である審判甲第1、第2号証にそれぞれ記載された考案であるから、実用新案法3条1項3号に規定する考案に該当し、また、審判甲第1、第2号証に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定に違反して実用新案登録を受けたものであるので、その登録は無効とされるべきものである旨主張し、次の審判甲第1~第3号証を提出している。
① 審判甲第1号証…カタログ「Fkフクハラ/小形ドレンデストロイヤー」の写しを添付した、埼玉県浦和市<以下略>【J】がオリオン機械株式会社代表取締役【H】にあてた平成9年9月19日付け書面
② 審判甲第2号証…特公昭63-39799号公報(審決が引用例としたもの。その図面は本判決別紙引用例図面参照)
③ 審判甲第3号証…原告代表取締役【A】が被告オリオン機械株式会社代表取締役【H】にあてた平成9年5月13日付け通知書
④ 証人1…【J】
⑤ 証人2…【A】
(3) 原告(被請求人)の主張
(3)-1 被告ドムニク ハンター リミテッドの主張に対して、原告は、概略、以下の主張を行う。
ⅰ) 審判甲第1、第2号証に記載されたものは、ドレントラップ→ドレン送り装置→油水分離装置の順にドレンが流れるものである。
ⅱ) 審判甲第1、第2号証に示される密閉槽は本件考案のように密閉槽に圧力のあるドレンが流入してから減圧される構成とは異なるものである。
ⅲ) 審判甲第1、第2号証に記載されたものは、a.ベコマートでドレン液体を分離する。b.このドレンはフル自動のドレン送り装置によって圧力をかけて油水分離装置へ送られる。c.減圧室で減圧される。d.減圧されたドレンが油水分離槽へ流入する。e.油水分離。f.清水の排出の順に、ドレンが流れるものである。
ⅳ) 審判甲第1号証、審判甲第2号証には審判甲第3号証を併せて考察しても本件考案の主要な構成である「ドレントラップの出口と、油水分離装置のドレン入口と、を連結したこと、」「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置」が記載されていないし、また、これを示唆する記載がない。
ⅴ) したがって、本件考案と審判甲第1号証、審判甲第2号証に記載の考案は同一でない。
また、本件考案は「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口」を有することにより、油水分離槽中へドレン及び空気が仮に噴出しても、周囲の床上を汚すことがない格別顕著な効果を奏するものであるから、当業者といえども審判甲第1号証、審判甲第2号証に記載された考案に基づいて極めて容易に考案をすることができたものではない。
(3)-2 被告オリオン機械株式会社の主張に対して、原告は、概略、以下の主張を行う。
ⅰ) 審判甲第1号証のカタログに示されたP18形分離槽のフタに設けられてある穴は大きな穴であって大気に対して開放されている。したがってP18形分離槽は開放槽である。P18形分離槽が解放槽であることは審判甲第1号証の裏面の「仕様」の欄の「最高使用圧力」の項に「P18形分離槽は大気に開放されています。」との記載より明白である。
ⅱ) 審判甲第1号証の2頁右上の図において、「①②③」下の矢印で示すP18形分離槽のフタの穴の径は約40mmと大きな穴である。
審判甲第1号証には「排気口」は開示されていない。
ⅲ) 審判甲第2号証(審決が引用例としたもの。以下「引用例」と表記)に示される油処理槽8は図面(別紙引用例図面参照)に示すように図示圧力計を備えかつ安全弁17を有して圧力容器をなしており、安全弁17が常時は動作しないことは、引用例の2頁4欄35行目から3頁5欄25行目の記載から明らかである。すなわち、ドレントラップから排出されるドレンと、このドレンに同伴する圧縮空気は油処理槽8と油吸着槽19を結合している管20を通り、油処理槽8から油吸着槽19へ交互に送られ、常態において上記圧縮空気は間欠的に油処理槽8から管20、油吸着槽19を通り大気に開放される。なお引用例には管20を通り大気に開放されるとあるが管20は油吸着槽19を下流側として結合されているのであるから圧縮空気室12の圧縮空気は油吸着槽19を通じて大気に開放されるのである。引用例に記載のとおり、引用例の安全弁17は油処理槽8の圧力容器としての安全性確保のために設けられており、排気口ではない。
ⅳ) 審判甲第1号証、引用例には本件考案の主要な構成である「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する」ことが記載されていないし、また、これを示唆する記載がない。
ⅴ) 本件考案と審判甲第1号証、引用例に記載の考案は同一でない。また本件考案は「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口」を有することにより、油水分離槽中へドレン及び空気が仮に噴出しても、周囲の床上を汚すことがない格別顕著な効果を奏するものであるから、当業者といえども審判甲第1号証、引用例に記載された考案に基づいて極めて容易に考案をすることができたものでもない。
(4) 訂正請求
(4)-1 平成10年4月20日付け訂正請求書により求めた訂正の内容は、願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおり訂正するものであるが、要旨は次のとおりものと認める。
① 明細書における「実用新案登録請求の範囲」の請求項1を下記のとおりに訂正する。
『1. ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置。』
② 明細書における「実用新案登録請求の範囲」の請求項2を削除する。
③ 明細書4頁14行目から5頁2行目(公告公報2頁3欄13行目から21行目)に記載した「本考案の第1の考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。本考案の第2の考案は油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水とに分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有することを特徴とする第1の考案記載の空気圧縮装置である。」を、
『本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。』に訂正する。
④ 明細書9頁18行目(公告公報3頁5欄26行目)に記載した「本考案の第1の考案は」を『本考案は』に訂正する。
⑤ 明細書10頁6行目から8行目(公告公報3頁6欄5行目から7行目)に記載した「可能となる。本考案の第2の考案は第1の考案において油水分離装置」を『可能となるものにおいて、油水分離装置』に訂正する。
(4)-2 平成10年10月26日付け手続補正は、訂正請求書に添付した全文訂正明細書について、次の①、②の補正を行うものである。
① 全文訂正明細書中の「実用新案登録請求の範囲」の請求項1の「1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置。」を、『1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置。』と補正する。
② 全文訂正明細書の2頁19行から第22行に記載の「本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。」を、『本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置である。』と補正する。
(4)-3 訂正拒絶理由通知
平成10年12月7日付け訂正拒絶理由通知は、手続補正による補正後の訂正請求に対して通知されたものであり、次の主旨の訂正拒絶の理由を含むものである。
訂正考案は、引用例に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則4条1項の規定によりなお効力を有するとされた同法による改正前の実用新案法3条2項の規定により、出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、本件訂正請求は、同附則4条2項の規定により読み替えて適用する前記実用新案法40条5項の規定により準用する同法39条3項の規定に違反し、当該訂正は認められない。
(4)-4 訂正拒絶理由通知に対する原告の反論
原告は、訂正拒絶理由通知に対し、意見書において、以下の旨反論する。
引用例には「槽内が仕切板により油浮上分離室と水貯槽室に区分されていると共に、それら油浮上分離室と水貯槽室の上部が圧縮空気室に形成されている密閉式油処理槽と、この油処理槽の水貯槽室に対して管を介して連なる油吸着槽と、この油吸着槽に連なる清澄水放流管を備え、エアコンプレッサのエアタンク、アフタークーラー、ドレンセパレータ、ドライヤー等の除湿装置の全部又は一部のドレン配管を、上記密閉式油処理槽の油浮上分離室に直接接続し除湿装置からの油分を含むドレンを、ドレンと共に排出される圧縮空気の圧力によって直接油処理槽及び油吸着槽に送り、ドレン内の油分を分離除去するようにしたことを特徴とするエアコンプレッサに於けるドレン油水分離装置」(引用例特許請求の範囲、図面参照)と記載されている。この記載のとおり、引用例のドレン油水分離装置は密閉式油処理槽、油吸着槽及び清澄水放流管と、を有する。そして、「当該水貯槽室11と次段の油吸着槽19の間を連なる管20は配管されていて」(引用例の3欄43行から4欄1行、図面参照)となっている。
上述より明らかなように、訂正拒絶理由通知の3頁22行から23行に記載の「安全弁によって所定圧力に保持された圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される。」との引用例の引用の部分は引用例に係る考案の作用を省記してあるものであって、上記圧縮空気Aは管20、油吸着槽19及び清澄水放流管を介して大気に開放されるものである。
今、仮に油吸着槽19を備えないで管20を介して大気に開放しておくと、空気のみならずドレンも排出されてしまうのである。すなわち、管20は常時大気と連通している排気口に相当しないのである。
したがって、訂正拒絶理由通知の4頁15行から16行に記載の“管20”が「排気口」に相当するとの認定は妥当性がないから、
「そして、訂正考案と引用例に記載されたものとを対比すると、引用例に記載された考案の“油浮上分離室10”、“密閉式油処理槽8”、“管20”が、それぞれ訂正考案の「ドレンを油と水に分離する手段」、「油水分離装置」、「排気口」に相当し、」は否認する。
したがって、また、訂正拒絶理由通知4頁17行から5頁7行に記載の「両者は、ドレントラップ……程度のものである。」は否認する。
したがって、訂正考案は、引用例に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものではなく、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の実用新案法3条2項の規定に該当せず、実用新案登録を受けることができるものである。
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則4条2項の規定により読み替えて適用する前記実用新案法40条5項の規定により準用する同法39条3項の規定に違反しないものである。
(4)-5 訂正請求の適否についての審決の判断
(4)-5-1 訂正請求の要旨
平成10年4月20日付け訂正請求に対する平成10年10月26日付け手続補正は、訂正請求書に添付した明細書における実用新案登録請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、本件訂正請求の要旨は、平成10年4月20日付け訂正請求書及び平成10年10月26日付け手続補正書の記載からみて、次の①~⑤のとおりのものと認める。
① 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「1. ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置。」と訂正する。
② 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除する。
③ 願書に添付した明細書4頁14行~5頁2行の「本考案の第1の考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。本考案の第2の考案は油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水とに分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有することを特徴とする第1の考案記載の空気圧縮装置である。」(公告公報2頁3欄13行目から21行目参照)を、「本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置である。」と訂正する。
④ 願書に添付した明細書9頁18行の「本考案の第1の考案は」(公告公報3頁5欄26行目参照)を、「本考案は」に訂正する。
⑤ 願書に添付した明細書10頁6~8行の「可能となる。本考案の第2の考案は第1の考案において油水分離装置」(公告公報3頁6欄5行目から7行目参照)を、「可能となるものにおいて、油水分離装置」に訂正する。
(4)-5-2 訂正の目的の適否、新規事項の存否
①、②の訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、③~⑤の訂正は、①、②の訂正に伴って実用新案登録請求の範囲と考案の詳細な説明の記載を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、①~⑤の各訂正は、願書に添付した明細書又は記載した事項の範囲内における訂正である。
(4)-5-3 独立登録要件について
(ⅰ) 訂正明細書の請求項に係る考案の要旨本件訂正明細書の請求項に係る考案(訂正考案)は、前記補正後の訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「1. ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置。」
(ⅱ) 訂正拒絶理由の引用例
平成10年12月7日付け訂正拒絶理由で引用した特公昭63-39799号公報(引用例)には、
「槽内が仕切板により油浮上分離室と水貯槽室に区分されていると共に、それら油浮上分離室と水貯槽室の上部が圧縮空気室に形成されている密閉式油処理槽と、この油処理槽の水貯槽室に対して管を介して連らなる油吸着槽と、この油吸着槽に連らなる清澄水放流管を備え、エアコンプレッサのエアタンク、アフタ-ク-ラ-、ドレンセパレ-タ、ドライヤ-等の除湿装置の全部又は一部のドレン配管を、上記密閉式油処理槽の油浮上分離室に直接接続し除湿装置からの油分を含むドレンを、ドレンと共に排出される圧縮空気の圧力によって直接油処理槽及び油吸着槽に送り、ドレン内の油分を分離除去するようにしたことを特徴とするエアコンプレッサに於けるドレン油水分離装置。」(1欄2~16行)、「除湿装置から分離されるドレンと共に排出される同伴圧縮空気のエネルギ-を利用することにより、除湿装置から排出された油分を含むドレンをその圧縮空気圧により直接油水分離装置へ送り、動力ポンプ等動力を一切要することなくドレン内の油分を効果的に除去し、良好な清澄水を得ることのできるドレン油水分離装置を提供するにあり、」(2欄26行~3欄4行)、「このドレン内には、空気圧縮時、空気圧縮機2から同伴した潤滑油が混合し、油濁水を示している。」(3欄23行~同25行)、「油浮上分離室10には、底から一定高さの所に浮上油排出弁15を有する浮上油排出管16が接続されていると共に、圧縮空気室12には、圧縮空気室12内の圧縮空気圧力が予め定めた所要の設定圧力以上になった場合に大気へ放出する為の安全弁17を有する圧縮空気排出管18が接続されている。」(3欄36行~同42行)、「すなわち、24,25,26,27は各々エアタンク3、アフタ-ク-ラ-5、ドレンセパレ-タ6、ドライヤ-7のドレン配管を示し、それら各々にドレンを圧縮空気と共に排出できるドレントラップ又は手動弁28,29,30,31が配され、上記の内ドレン配管24,25,26,27は管32,33によって一つに集合せしめられ、管33が油処理槽8の油浮上分離室10の底部に接続されているものである。この場合、条件によっては上記除湿装置のドレン配管の各々を油処理槽8の油浮上分離室10に接続してもよい。」(4欄22行~同32行)、「エアタンク3、アフタ-ク-ラ-5、ドレンセパレ-タ6、ドライヤ-7等の除湿装置で生じたドレンは、ドレンラップ又は手動弁28,29,30,31により間欠的にドレン配管24,25,26,27を通じて圧縮空気と共に排出され、その排出されたドレン及び圧縮空気は管32,33を介して先ず油処理槽8の油浮上分離室10へ送液される。油浮上分離室10へ送られると、油濁水のドレンは、その比重差により下部に水Wが、その上部に油Fが分離されて油浮上分離室10内に溜り、水Wは水貯槽室11内へも流入する。且つ、同伴圧縮空気Aは圧縮空気室12に導かれる。圧縮空気12には安全弁17が配されているので、設定圧力以上の圧力は該弁の作動により放出され、圧縮空気室には所定の圧力に保持される。且つ、ここで、水Wの液面高さが、管20の水貯槽室11内に於ける管端21以下である場合には、安全弁によって所定圧力に保持された圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される。そして、次第に水Wが水貯槽室11内に溜り、管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められるので、その圧縮空気の圧力により水Wが管端21から管20内へ押出され、且つその圧力で油吸着槽19内の油吸着材22の間を通り、その過程で水中に混入せる油粒子が油吸着材22によって吸着され、油粒子の除去された清澄水が管23を介して外部の放水系へ放水されるものである。そして、管33よりの油濁水のドレン流入量に比して、管端21から圧縮空気圧によって排出されるドレンの流出量が大となり、水貯槽室11内の水の量が次第に減少し、管端21以下になった場合には、その時点で管端21からのドレンの排出は停まり、圧縮空気室12内の圧縮空気が大気に開放され、以後ドレンの排出各にこれらの動作が繰り返される。」(4欄35行~5欄25行)等の記載があるものと認める。
そして、特に、上記「水Wの液面高さが、管20の水貯槽室11内に於ける管端21以下である場合には、安全弁によって所定圧力に保持された圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される。」、「水貯槽室11内の水の量が次第に減少し、管端21以下になった場合には、その時点で管端21からのドレンの排出は停まり、圧縮空気室12内の圧縮空気が大気に開放され、」、「水Wが水貯槽室11内に溜り、管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められる」との記載に注目すると、引用例に記載されたものは、水Wの液面高さが管20の管端21以下の状態で、管20に油吸着槽19及び清澄水放流管23が接続されていても、圧縮空気室12の空気Aは、管20、油吸着槽19及び清澄水放流管23を通じて大気に開放されていることは、明らかである。
また、特に、上記「水Wが水貯槽室11内に溜り、管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められるので、その圧縮空気の圧力により水Wが管端21から管20内へ押出され、且つその圧力で油吸着槽19内の油吸着材22の間を通り、その過程で水中に混入せる油粒子が油吸着材22によって吸着され、油粒子の除去された清澄水が管23を介して外部の放水系へ放水される」との記載に注目すると、引用例に記載されたものは、水貯槽室11内の管端21の高さを越える水Wを水貯槽室11外へ排出する手段として、管20に油吸着槽19及び清澄水放流管23を設け、圧縮空気室12が形成されていることは、明らかである。
したがって、引用例には、
“ドレントラップ28を備えたエアタンク3付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップ28の出口と、内部にドレンを油と水に分離する油浮上分離室10、水貯槽室11、圧縮空気室12を備えた密閉式油処理槽8のドレン入口とを連結し、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき前記圧縮空気室12内の空気Aを大気に開放する管20を備え、ドレントラップ28の作動によりドレン及び空気が送られ密閉式油処理槽8内で空気は減圧され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき、空気は管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さを越えると、水Wを、前記圧縮空気室12内の圧力によって、前記管20より油吸着槽19及び清澄水放流管23を通して、その過程で水中に混入せる油粒子を油吸着材22によって吸着させて、清澄水を外部へ排出して、水貯槽室11内の水Wの液面を管端21の高さ以下に低下させ、空気Aが管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出される空気圧縮装置、”
が記載されているものと認められる。
(ⅲ) 対比・判断
訂正考案と引用例に記載されたものとを対比すると、
引用例に記載されたものにおいて、管20は、前述のように圧縮空気室12内の空気Aを大気に開放する機能と管端21の高さを越える水を排出する機能を兼ねるものであり、また、引用例に記載されたものの“油浮上分離室10”、“密閉式油処理槽8”が、それぞれ訂正考案の「ドレンを油と水に分離する手段」、「油水分離装置」に相当するから、
両者は、
ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に空気を大気中へ放出する排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されて排気口より大気中へ放出される空気圧縮装置、
である点において一致し、
訂正考案は、排気口が「常時大気と連通している」ものであり、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されて「すべて」排気口より大気中へ放出されるのに対して、引用例に記載されたものは、排気口が「常時大気と連通している」ものでなく、空気が「すべて」大気中へ放出されるものでない点で相違する。
そこで、この相違点について検討する。
引用例に記載されたものは、水貯槽室11内の管端21を越える水Wを圧縮空気室12内の圧力を利用して自動的に管20、油吸着槽19及び清澄水放流管23を通して外部へ排出する手段として、水貯槽室11上部に圧縮空気室12を形成し、ここに圧縮空気を貯えるために排気口が「常時大気と連通している」ものとしない構成を採用したものであることは、「管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められるので、その圧縮空気の圧力により水Wが管端21から管20内へ押出され、且つその圧力で油吸着槽19内の油吸着材22の間を通り、その過程で水中に混入せる油粒子が油吸着材22によって吸着され、油粒子の除去された清澄水が管23を介して外部の放水系へ放水されるものである。」等の明細書の記載から、明らかなことである。
したがって、水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、排気口が「常時大気と連通している」構成とすることは、当業者が極めて容易に想到し得ることであり、排気口が「常時大気と連通している」構成とすることによって、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されて「すべて」排気口より大気中へ放出されるから、相違点における訂正考案の構成は、引用例に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に想到し得たものとするのが相当である。
そして、訂正考案の作用効果は、引用例に記載されたものから予測し得る程度のものである。
なお、原告は、引用例に記載されたものについて、「仮に油吸着槽19を備えないで管20を介して大気に開放しておくと、空気のみならすドレンも排出されてしまうのである。すなわち、管20は常時大気と連通している排気口に相当しない。」旨主張する。しかしながら、この主張は水貯槽室11内の水Wの液面の高さが管20の管端21を越える場合の主張と認められるが、訂正考案においても、油水分離装置内のドレンの液面の高さが排気口を越える場合には、排気口を通じて、空気のみならずドレンも排出されるものと認められ、訂正考案も所定水位以下で排気口は常時大気と連通するものであるから、原告の上記主張は採用できない。
したがって、訂正考案は、引用例に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の実用新案法3条2項の規定により、出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(4)-6 訂正請求についての審決のむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則4条2項の規定により読み替えて適用する同法による改正前の実用新案法40条5項の規定により準用する同法39条3項の規定に違反するものであるから、当該訂正は認めることはできない。
(5) 本件考案の要旨
以上のとおり、本件訂正請求は認めることができないから、本件登録第2118598号実用新案の請求項1及び2に係る考案(本件考案)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「1. ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結したことを特徴とする空気圧縮装置。
2. 油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水に分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有することを特徴とする請求項1記載の空気圧縮装置。」
(5)-1 引用例
引用例には、前記のとおり、
“ドレントラップ28を備えたエアタンク3付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップ28の出口と、内部にドレンを油と水に分離する油浮上分離室10、水貯槽室11、圧縮空気室12を備えた密閉式油処理槽8のドレン入口とを連結し、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき前記圧縮空気室12内の空気Aを大気に開放する管20を備え、ドレントラップ28の作動によりドレン及び空気が送られ密閉式油処理槽8内で空気は減圧され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき、空気は管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さを越えると、水Wを、前記圧縮空気室12内の圧力によって、前記管20より油吸着槽19及び清澄水放流管23を通して、その過程で水中に混入せる油粒子を油吸着材22によって吸着させて、清澄水を外部へ排出して、水貯槽室11内の水Wの液面を管端21の高さ以下に低下させ、空気Aが管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出される空気圧縮装置、”
が記載されているものと認める。
(5)-2 対比・判断
(5)-2-1 請求項1に係る考案について
引用例に記載されたものの密閉式油処理槽8は、内部に油浮上分離室10を備えるものであるから、請求項1に係る考案の「油水分離装置」に相当し、
請求項1に係る考案と引用例に記載されたものとは、ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結した空気圧縮装置、
である点において一致し、引用例に記載されたものは、請求項1に係る考案の構成をことごとく備えるものである。
したがって、請求項1に係る考案は、引用例に記載されたものと同一の考案である。
(5)-2-2 請求項2に係る考案について
引用例に記載されたものの密閉式油処理槽8は、内部に油浮上分離室10を備えるものであるからドレンを油と水に分離する手段を備え、本件請求項2に係る考案の「油水分離装置」に相当するものと認められ、また、引用例に記載されたものの“管20”は、圧縮空気室12内の空気を大気に開放する機能と管端21の高さを越える水を排出する機能を兼ねるものであるから、圧縮空気室12内の空気を大気に開放する機能に着目して、本件請求項2に係る考案の「排気口」に相当するとすることができるので、請求項2に係る考案と引用例に記載されたものとは、
油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水に分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有する点
で一致し、さらに、前記請求項1に係る考案は引用例に記載されたものと同一の考案であるから、結局、引用例に記載されたものは、請求項2に係る考案の構成をことごとく備えるものである。
したがって、請求項2に係る考案は、引用例に記載されたものと同一の考案である。
(6) 審決のむすび
以上のとおり、本件請求項1、2に係る考案(本件考案)は、引用例に記載されたものと同一であるから、本件請求項1、2に係る考案の実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の実用新案法3条の規定に違反してされたものであるから、同実用新案法37条1項1号に該当し、無効とされるべきものである。
第3原告主張の取消事由
審決は、訂正考案と引用例記載のものの一致点の認定を誤り(取消事由1)、相違点の判断を誤った(取消事由2)ものであるから、違法として取り消されなければならない。
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)
(1) 訂正考案について
審決は、「訂正考案においても、油水分離装置内のドレンの液面の高さが排気口を越える場合には、排気口を通じて、空気のみならずドレンも排出されるものと認められ、訂正考案も所定水位以下で排気口は常時大気と連通するものである」と認定判断しているが、誤りである。
すなわち、訂正考案の「油水分離装置」は、密閉槽に排気口を有するものであるから、排気口からは空気が放出されるが、油と水は排気口から排出されずに密閉槽に貯まったままであり、正常な使用方法においては、「水も容器11に相当量溜められる。そこでフタ13を開け、容器11を運搬して水のみを下水に流」(補正後の訂正明細書4頁16~18行)すものであるから、ドレンの液面の高さが排気口を越えるような異常な使い方(誤った使用方法)をしない。上記の審決の認定判断は、このような異常な使用方法を前提にするものであるから、誤っている。
(2) 引用例について
引用例では、油処理槽8と油吸着槽19は管20で接続されており、この管20の管端21の上方には、圧縮空気Aが閉じ込められた圧縮空気室12が形成されている。引用例には「次第に水Wが水貯槽室11内に溜り、管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められるので、その圧縮空気の圧力により水Wが管端21から管20内へ押出され、且つその圧力で油吸着槽19内の油吸着材22の間を通り、その過程で水中に混入せる油粒子が油吸着材22によって吸着され」(3頁5欄10~16行)と記載されており、このようにして油粒子が除去された清澄水が得られる。
ここで、水Wが管端21を越えると、この越えた分の水が管端21から管20内へ流れ出すが、この管20内には定常的に水が溜ったままであり、管20の一部が水で塞がれている。したがって、管20(管端21)は大気と連通していない。そして、油処理槽8には管33からドレンと圧縮空気が送られてくるから、圧縮空気室12の圧縮空気Aの圧力が高まって、毛細管現象によって水が充満している油吸着材22を通過し得る圧力以上になると、管20内の水が油吸着槽19に送られる。このとき、管20内の水とともに圧縮空気Aの一部も油吸着槽19に送られ、油吸着材22の作用で油エマルジョン中の多数の微小油粒子が集まって粗粒とされ、この粗粒になった油粒子が油吸着材22に吸着される。このようにして油吸着材22に油粒子が次々に吸着されて油粒子の量が増加すると、油吸着槽19は、水や圧縮空気が通過する際にその通過を妨げる抵抗が増大する。以上の事項は、引用例中に記載されていないが、当業者であれば技術常識から自明である。
引用例には、「圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される」(3頁5欄9行)とあるが、圧縮空気Aは管20を経由して油粒子の付着した油吸着槽19を泡状になって通り、さらに清澄水放流管23を通って、初めて大気に開放される。
以上のように、引用例の油水分離装置では、圧縮空気室12に圧縮空気Aが積極的に貯まるように構成され、圧縮空気室12に閉じ込められた圧縮空気Aを利用して、ドレンから分離された水を水貯槽室11から油吸着槽19に送るものであるのに対し、訂正考案では、大気に連通している排気口が密閉槽に形成されていて、圧縮空気を該排気口から大気に放出するものであるから、両者は技術的思想が異なるものであり、引用例における水貯槽室11と油吸着槽19を連ねる管20は、訂正考案のように空気を排気口から直接スムースに大気中に開放するものではないから、訂正考案の排気口に相当しない。したがって、この点で一致するとした審決の一致点の認定は、誤りである。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)
(1) 審決が、相違点について「水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、排気口が『常時大気と連通している』構成とすることは、当業者が極めて容易に想到し得ることであり」と判断したのは誤りである。
すなわち、引用例には、水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、「排気口が常時大気と連通している」構成とする動機づけがないから、訂正考案を知らずして、水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、排気口が「常時大気と連通している」構成には、到底できるものではない。
引用例において、管20を油吸着槽19から取り外して大気に直接に連通させ、油吸着槽19、清澄水放流管23、安全弁17などをなくすことにより、訂正考案に似たような構成が得られるが、このようになすことは、引用例には開示も示唆もない。
(2) 訂正考案は、常時大気と連通する排気口を有する非加圧槽であり、引用例記載のものは、圧縮空気室を有する圧力容器であって、閉じ込められて圧縮された空気を利用して、油粒子が混入した水と空気を、油吸着槽を通過する抵抗に打ち勝って圧送するものである。したがって、引用例記載のものでは圧力容器とすることが欠くことのできない密閉槽にしてある理由から、非加圧の密閉槽を極めて容易に想到し得るものではない。
引用例記載のものでは、ドレンを油と水に分離する油処理槽8、圧縮空気室12に取り付けられた安全弁17、水から油粒子を吸着する油吸着槽19、油処理槽8と油吸着槽19をつなぐ管20、清澄水を放流する清澄水放流管23など多数の部品が備えられていて、複雑な構成となっているのに対し、訂正考案では簡易な構成となっているから、容易に運搬することができ、使い勝手が良いというメリットがあるところ、審決が「訂正考案の作用効果は、引用例に記載されたものから予測し得る程度のものである」と判断したのは、誤りである。
すなわち、引用例に記載された空気圧縮装置には、浮上油排出弁15、浮上油排出管16、安全弁17などが固定されており、このため、簡単で安価な装置とはいえないのに対し、訂正考案は「密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置」を備えることにより、「簡単で安価な装置のみで良好な排水処理が可能となる」(補正後の全文訂正明細書4頁27~28行)という作用効果を奏する。
訂正考案の出願前には、訂正考案に似た構造のものが使用されたり販売されてもいないし、また、訂正考案を開示したり示唆したものもない。しかも、訂正考案と引用例記載のものでは出願人も考案者も同一であり、考案者は創意工夫を重ねて、引用例記載のものとは異なる訂正考案を創作したものである。
(3) 被告らは、実願昭60-199423号(実開昭62-109707号)のマイクロフィルムを周知技術を示す証拠として提出した(乙第1号証。その図面は本判決別紙乙第1号証図面参照)。しかし、同号証には「気水分離器3の構造は既知であり、ドレンと一緒に排出される圧縮空気を分離して圧縮空気出口4から排出する」(2頁12~14行)と記載されているから、圧縮空気は気水分離器で分離されるのであって油水分離装置で分離されるのではなく、分離後の圧縮空気がリザーバタンク1内を通じて、圧縮空気出口4から排出される。すなわち、油水分離装置は、圧縮空気を排出するものであり、この排出された圧縮空気の行き先は同号証に明らかにされておらず、大気に開放されることを示唆する記載もない。そして、そのマイクロフィルムに記載のものでは圧縮空気出口4に管継手の一種であるニップルが設けられているから、当業者であれば、配管類が接続されることが自明であるが、その先までは分からないし、ドレン入口2から入るドレンが送られてくる元についても記載がないから、分からない。すなわち、そこに記載のものは、気水分離器3で分離された圧縮空気を大気に放出することなく油水分離装置であるリザーバタンク1へ通じて、リザーバタンク1の排気口4から排気することを示すにすぎないから、排気口が常時大気と連通している構成とすることは、当業者が極めて容易に想到することができた程度のものと判断する上での、周知技術としての根拠になるものではない。
第4審決取消事由に対する被告ドムニク ハンター リミテッドの反論
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して
(1) 訂正考案について
訂正考案においては、ドレンの液面の高さが排気口16を越えないうちに、蓋13を開けて、水を下水に流すものである。このことは、訂正考案の油水分離装置を使用する際には、ドレンの液面の高さが排気口を越えるような異常な使い方をしないとする原告の主張からも明らかである。つまり、訂正考案の油水分離装置は、ドレン(水)の液面の高さが排気口を越えないという条件下においてのみ、排気口は大気と常時連通している。訂正考案において、仮にドレン(水)の液面の高さが排気口を越えた場合には、排気口から空気のみならずドレン(水)も排出されるから、原告が主張する大気と常時連通する排気口に該当しない。
(2) 引用例について
原告は、引用例における水貯槽室11と油吸着槽19を連ねる管20は、排気口に相当しないと主張する。
しかし、管33を経由して密閉式油処理槽8にドレンが送られるのは、引用例中の「除湿装置からのドレン排出時期」(3頁6欄20行)の記載からも理解されるように断続的であり、一般的には、油処理槽8にドレンが送られるのは、むしろ部分的な時間であるから、油処理槽8にドレンが送られない時間が全体のかなりの時間を占め、この間には管20中に水がほとんど存在しないから、管20は大気と連通した排気口となる。また、管20中に水が存在する場合においても、空気は管20を経由し、さらに油粒子の付着した油吸着槽19を泡状になって通り、さらに清澄水放流管23を通り、大気に開放されるので、大気と連通していることに変わりはない。したがって、管20中に水が存在しないときだけでなく、水が存在しているときも大気と連通しており、この意味で常時大気と連通しているといえる。
油処理槽8においても、ドレン(水)の液面の高さが管20の管端21を越えない条件下においては、前記管20を介して大気と常時連通しているものである。したがって、ドレン(水)の液面の高さが空気を大気中に排出する管口の高さを越えない条件下において大気と常時連通しているという視点において、引用例の管20は、訂正考案の排気口16に相当する。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)に対して
(1) 訂正考案では、油処理槽から、油粒子を混入した水を自動的に油吸着槽に送ることを要さないものであるから、引用例の管20は不要なものであり、これを取り去れば、空気を大気へ放出するための排出口が存在しないことになるから、空気の排出口を設けようとするのは、ごく自然に考えられることであり、その際に、特に必要がない限り、その排出口は常時大気と連通したものとするのが通常である。したがって、常時大気と連通している排気口を設けたことは、引用例に記載のところに基づいて極めて容易に想到し得た要件にすぎない。
(2) 実願昭60-199423号(実開昭62-109707号)のマイクロフィルム(乙第1号証)は、油水分離装置において、常時大気と連通している排気口を設けることが、周知技術であることを示す資料である。同号証には「ドレン入口2から入ったドレンは、気水分離器3を通って油水分離槽5にたまる。気水分離器3の構造は既知であり、ドレンと一緒に排出される圧縮空気を分離して圧縮空気出口4から排出する」(2頁10~14行)と記載され、図示されている圧縮空気出口4は、明らかに「常時大気と連通している排気口」である。したがって、上記周知技術を勘案すれば、引用例においても、水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、排気口が常時大気と連通している構成にすることは、極めて容易に想到し得た程度のものにすぎない。
原告は、訂正考案の顕著な効果を主張するが、引用例の装置では、密閉式油処理槽8から外部への排水処理を自動的に行わせるものであり、そのための技術的工夫がなされている。これに対し、訂正考案では、自動的に排水処理させることをせずに、人の労力でフタ13を開け、容器11を運搬して排水処理するなどの作業を行うものであるから、その分、簡単で安価な装置になること当然である。
第5審決取消事由に対する被告オリオン機械株式会社の反論
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して
(1) 訂正考案について
訂正考案についての審決の認定に、原告主張の誤りはない。
(2) 引用例について
原告は、引用例における水貯槽室11と油吸着槽19を連ねる管20は、排気口に相当しないと主張する。
しかし、引用例の管20は、同引用例に「圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される」(3頁5欄9行)と記載されていることなどにより、油浮上分離室内の空気を排出する機能を有し、訂正考案の排気口16に相当することは明らかである。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)に対して
周知技術を示す資料として提出する実願昭60-199423号(実開昭62-109707号)のマイクロフィルム(乙第1号証)には、訂正考案と同じ技術分野に属する「油水分離装置」の考案が記載されており、そこに「ドレン入口2から入ったドレンは、気水分離器3を通って油水分離槽5にたまる。気水分離器3の構造は既知であり、ドレンと一緒に排出される圧縮空気を分離して圧縮空気出口4から排出する」(2頁10~14行)と記載されていることから知れるように、リザーバタンク1内の気圧を下げないとドレントラップを開いたときに、ドレンと空気の混合体が流れにくいことは、当業者の技術常識である。
したがって、排気口が常時大気と連通している構成とすることは、当業者が極めて容易に想起し得たことである。
第6当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について
(1) 訂正考案について
(1)-1 甲第9号証によれば、補正後の全文訂正明細書には、「ドレントラップ9から排出されるドレン及び空気は・・・送り出されて油水分離装置10のドレン入口10aから油水分離装置10中へ流入する。ドレン入口管接手14から容器11に入った空気は減圧される。・・・ドレンとは分離状態で油水分離装置10に入った空気は配管から容器11の大きな空間に入るため、減圧作用と圧力変動の緩和作用を受け、ドレントラップ9側から加わった背圧で排気口16の細孔16aから緩速度で大気中に放出される。又、水に混入した空気は今まで流動した水が容器11に貯留状態で静止しているので徐々に抜けて上部空間を介して排気口の細孔16aから大気中に放出される。」(3頁末行~4頁12行)、「使用により吸油材17の油の吸着が飽和状態になると水も容器11に相当量溜められる。そこでフタ13を開け、容器11を運搬して水のみを下水に流し、吸油材17は集積しておいて処理業者に渡して焼却処理又は廃棄する。」(4頁16~19行)と記載されていることが認められる。
これらの記載及び本件考案の第1ないし第3図(本判決別紙本件考案図面)によれば、訂正考案においては、ドレントラップから排出される空気と、同じく排出されるドレン中の水に混入した空気は、徐々に水から抜けて、排気口を通じて大気中に放出されるが、この際に容器11に相当量溜まっても、フタ13を開けて容器11を運搬して水のみを下水に流する作業を怠った場合や急激に多量のドレンが流入した場合には、排気口16から空気だけでなく、ドレン自体が排出されることは明らかである。
そうすると、審決が「訂正考案においても、油水分離装置内のドレンの液面の高さが排気口を越える場合には、排気口を通じて、空気のみならずドレンも排出されるものと認められ、訂正考案も所定水位以下で排気口は常時大気と連通するものである」と認定した点に誤りはないということができる。
(1)-2 原告は、ドレンの液面の高さが排気口を超えるような異常な使い方をしないから、それを前提とする認定判断は誤りであると主張するが、訂正考案は人手により容器内に貯まった水をフタを開けて排出するという簡易な構成であるから、ドレンの流入量により、また人為的ミスにより、ドレンが排気口を超える危険性のあることは当業者であれば自明であり、それゆえに、訂正考案はドレン量が容器内の所定水位以下で使用しなければならないこと、その際には排気口が常時大気と連通していることは明らかであって、審決はこうした明白な事項を認定したにすぎないと認められる。よって、原告の主張は採用することができない。
(1)-3 原告主張の引用例との対比における一致点の認定についてみるに、原告は、引用例記載のものでは、圧縮空気は管20を経由して油粒子の付着した油吸着槽19を泡状になって通り、さらに清澄水放流管23を通って初めて大気に開放されるものであり、訂正考案の排気口から大気中に開放される空気のように直接スムースに開放されるものではないから、訂正考案とは技術的思想が異なるものであり、引用例の管20は訂正考案の排気口に相当するものではなく、したがって、この点で一致するとした審決の一致点の認定は誤りであると主張する。
しかし、前認定のとおり、補正後の全文訂正明細書には、「ドレンとは分離状態で油水分離装置10に入った空気は配管から容器11の大きな空間に入るため、減圧作用と圧力作用の緩和作用を受け、ドレントラップ9側から加わった背圧で排気口16の細孔16aから大気中に放出される。」(4頁7~12行)と記載されており、この記載によれば、訂正考案においても、空気がドレントラップ側から加わった背圧により排気口を通じて大気中に放出されるものと認められる。したがって、訂正考案と引用例記載のものは、共に大気と密閉容器の内部を連通した管を通じて、容器内部の空気の圧力を利用して、これを大気中に排出するという作用に変わりはないのであるから、引用例の管20が訂正考案の排気口に相当するとした審決の一致点の認定に、原告主張の誤りはない。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)について
(1) 原告は、引用例には、「排気口が常時大気と連通している」構成とする動機づけがないから、審決が、「水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、排気口が『常時大気と連通している』構成とすることは、当業者が極めて容易に想到し得ることであり」と判断したのは誤りであると主張する。
しかし、。周知技術を示すものとして提出された乙第1号証によれば、実願昭60-199423号(実開昭62-109707号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムに、「本考案は・・・特に、コンプレッサのドレン排水中に混入している潤滑油を分離、抽出するに好適な油水分離装置に関する。」(1頁9~12行)、「ドレン入口2から入ったドレンは、気水分離器3を通って油水分離槽5にたまる。気水分離器3の構造は既知であり、ドレンと一緒に排出される圧縮空気を分離して圧縮空気出口4から排出する。」(2頁10~14行)、「油だめ11の上部には通気口9を設け、水分滴下口8を通じて、リザーバタンク1内の各部の圧力を均圧化する。」(3頁1~3行)と記載されていることが認められる。これらの記載及びそこに添付の図面(本判決別紙乙第1号証図面)の記載によれば、そこには、ドレンから分離された空気が圧縮空気出口から排出されることにより、密閉槽であるリザーバタンク内の圧力が過度に上昇することを防止して、ドレンがリザーバタンク内にスムースに流入するよう図る事項が開示されていることが当業者にとって自明のことであり、密閉槽にドレン等を流入させる際に、密閉槽内の過度の圧力上昇が、かかる流入の妨げになること、それゆえ、大気に連通させる排気口が必要となることは、当業者には技術常識であったと認めることができる。
そうすると、訂正考案の「排気口が常時大気と連通している」との相違点に係る構成は、密閉槽である油水分離装置の機能を確保する上で、当業者が上記技術常識によって必要な対処をなしたということにすぎないから、審決が、相違点について「水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、排気口が『常時大気と連通している』構成とすることは、当業者が極めて容易に想到し得ることであり」と判断した点に誤りはなく、審決が「排気口が『常時大気と連通している』構成とすることによって、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されて「すべて」排気口より大気中へ放出されるから、上記相違点における訂正考案の構成は、引用例に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に想到し得たものとするのが相当である」と判断した点にも、誤りはない。
(2) 原告は、引用例記載のものが簡単で安価な装置とはいえないのに対し、訂正考案は「3槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置」を備えることにより、「簡単で安価な装置のみで良好な排水処理が可能となる」という作用効果を奏すると主張する。
しかし、引用例の示す装置(別紙引用例図面参照)が、油処理槽8と油吸着槽19を管20で接続し、圧縮空気室12の空気圧により排水する装置であるのに対し、訂正考案は、排水について「フタ13を開け、容器11を運搬して水のみを下水に流し」(訂正考案の補正後全文訂正明細書の前記認定記載)という人手による作業を必要とするものであることにより、装置が簡単で安価なものとなるのは当然の効果というべきであって、これを顕著な効果と認めることはできない。したがって、審決が「訂正考案の作用効果は、引用例に記載されたものから予測し得る程度のものである」と判断した点に誤りはない。
(3) 原告は、実願昭60-199423号(実開昭62-109707号)のマイクロフィルム(乙第1号証)について、油水分離装置が圧縮空気を排出するものであり、この排出された圧縮空気の行き先はそこに明らかにされておらず、大気に開放されることを示唆する記載もないこと、そこには圧縮空気出口4に管継手の一種であるニップルが設けられているから、当業者であれば、配管類が接続されることは自明であるが、その先までは分からず、排気口が常時大気と連通している構成とすることが周知技術であるとの根拠になるものではないと主張する。
しかし、前記説示のとおり、密閉槽にドレン等を流入させる際に、大気に連通させる排気口が必要となることは、当業者の技術常識であるから、乙第1号証に記載の圧縮空気出口4が大気に開放されていることは、当業者には自明であると認められる。原告は、圧縮空気出口4にニップルが設けられていることから、配管類が接続されていることは自明であると主張するが、仮にそうであるとしても、前記技術常識によれば、接続された配管の他端が大気に開放されている必要があるから、圧縮空気出口4が大気に開放されていることに変わりはなく、また、そのことは前記実願昭60-199423号(実開昭62-109707号)のマイクロフィルムに現に示されているものとみることができる。したがって、原告の上記主張も理由がない。
第7結論
以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、本訴請求は棄却されるべきである。
(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 橋本英史)
<以下省略>